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第4章「ついに横須賀市で十棟目、プリマ十番館」

プリマ壱番館が竣工した2007年10月からちょうど3年が過ぎた2010年10月10日にプリマ十番館が竣工します。五番館の竣工以降、プリマはその誕生の地である横須賀市で六番館、七番館、八番館と順調にその数を増やしていきました。四番館と九番館は欠番にしましたが、その他にも横須賀市にはプリマガーデン壱番館と弐番館が建っていましたので、プリマ十番館は名実共に横須賀市内に建つプリマの十番目の物件でした。竣工日はその日をねらって2010年10月10日にしました。そして、プリマ十番館のオーナーはスターホームの社長、星武司氏です。星社長はスターホームでのアパート事業を当初から私に一任していました。自分が所有するプリマ十番館の間取り、デザインについても詳細は全て私に任せてくれたのですが、星社長は建物に対する自身の要望をひとつだけその計画段階において私に伝えました。それは外観を完全なるシンメトリーにして欲しいということです。

洋の東西を問わず、伝統的な建物の多くがシンメトリー、左右対称の設計思想で建てられています。シンメトリーのデザインは見た目が美しいだけでなく、構造のバランスが良く、地震にも強く、耐久性に優れているからです。プリマの外観の基本デザインはプリマ壱番館以来この建物のシンメトリーを基本としたデザインなのですが、プリマでは1箇所だけ、外観の左右対称が崩れる所があるのです。それはその奥に共用の玄関ドアがある建物のポーチ開口部です。プリマの共用の玄関ドアは内部階段11段目の踊り場の下にあります。ポーチの奥行きは1mしかありません。玄関ドアに対し真直ぐの所にポーチ開口部を設ければ、その部分が建物の中心から50cmずれてしまうのです。私も社長に言われる以前からそのことは気になっていましたが、収益物件としてのレンタブル比を上げるために、共用部分は最小面積で構成します。そのためにプリマの玄関ポーチの開口部はどうしても建物の中心からずれてしまうのです。プリマの玄関ポーチの隣には必ずシマトネリコ、オリーブ等のシンボルツリーが植えられていますが、それはその部分のシンメトリーのずれを見た目で補正するためなのです。このプリマのシンメトリーのずれを無くし、外観を完全なるシンメトリーにすることが星社長の私に提示したプリマ十番館に対する要望でした。それ以前のプリマで標準化していた共用玄関と内階段の形状と寸法を変更することにより、私は星社長の要望に応えました。横須賀市内で十番目のプリマを記念し、その外観デザインにより一層の完璧を求めた記念館として計画されたのがプリマ十番館です。

プリマ十番館の計画をしていた当時、プリマは横須賀市内を含む神奈川県内で既に20棟160室が竣工し、市場に供給されていましたが、プリマは常に全棟が満室です。入居者の都合で退室があっても、プリマの賃貸募集をお願いしている不動産会社にはプリマへの入居を希望する顧客リストがあるので、すぐに次の入居者が決まります。オートロック、内階段、ロフト、自然素材、輸入部材、対面キッチン等、プリマには数多くの魅力がありますが、何と言っても、プリマの最大の魅力はプリマ壱番館から崩さず守ってきたその外観の美しさにあります。日本のアパートでは有り得ないその外観の美しさ故に、横須賀市内にある大学の女子学生や病院の看護士の間で、プリマは既に女性専用アパートとしてのブランドを築いていました。プリマ十番館はこのプリマのブランドにさらなる磨きをかける物件となりました。

完全な対称性を持つ外観デザイン以外にもプリマ十番館では新たな試みがありました。門扉と二階の部屋の窓辺に設けたフラワーボックスです。どちらも中国で製作したアイアンの特注品です。門扉は建物の中心にある玄関ポーチの開口部に取り付けました。門扉の数歩先にはオートロックを装備した共用の玄関ドアがありますので、セキュリティーの意味はあまりありません。建物を装飾するために取り付けたようなものです。フラワーボックスは私の学生時代からの愛読書であるサン・ティグジュペリの星の王子さまの一節にある、窓にジェラニュウムの鉢がおいてあるきれいな家をイメージして取り付けました。これもまた入居者にとっては、花の鉢を置く以外に用途はなく、建物を飾るためのものです。プリマ十番館では門扉とフラワーボックス、それと通常より多く使用した外部モールディングに結構な額の追加費用が発生しましたが、星社長は快く私の提案を受け入れてくれました。そうしたからといって、家賃が上がるわけじゃない、そういうものに惜しまず費用をかける。この考えこそがプリマの伝統、収益物件における不要の要です。利回りばかりを気にして、この逆説が理解できない人はプリマのオーナーに適しません。一見すれば収益物件には不要なものが物件に付加価値を与え、この付加価値こそが物件の収益を長期的に安定させるのです。

プリマ十番館の竣工を間近に控え、私は現場で外構工事の打ち合わせをしていました。既に建物を覆っていた足場と養生シートが外され、十番館の外観が道路面から良く見える状態でした。そこに近くの幼稚園に通う小さな女の子がお母さんと一緒に通りかかりました。女の子は十番館を見ながら、お母さんに聞きます。

「お母さん、このお家はなに?」

「若い女の人が住むアパートよ」

「お母さん、わたし大きくなったら、ここに住みたい」そう言って、二人は通り過ぎました。横須賀で十棟目を記念したプリマ十番館、その完成を祝うのに、この女の子の言葉以上のものはありませんでした。二人の会話を近くで聞いていて、私はとても嬉しかったです。

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